あぐりログって何?と調べて頂いた際に、
・あぐりログはそもそもどのようなコンセプトのサービスなのか?
・あぐりログは誰に使って欲しい製品なのか?
・あぐりログってそもそも何を改善しようと開発されたものなのか?
を説明している資料がWEB上にないので、上記の点があぐりログを知らない方にとって良く分からないことと思います。
弊社の公式HPには「あぐりログとは?」という名目で搭載している機能や製品のアピールポイント、ユーザー様からの声を掲載しています。しかし、あぐりログが一体どんなコンセプトで開発されたものなのか、誰に向けてどんな特徴を持ったサービスなのか、外部からは良く分からないのではないでしょうか。
そこで今回はあぐりログのことを全く知らない方に向けて、
・あぐりログの特徴や開発のコンセプトについて
をまとめてみました。
あぐりログのコンセプト
あぐりログは温室(圃場)の環境の状態を計測し、それをリアルタイムでPCやスマホの画面で確認できるというモニタリングサービスです。
開発のきっかけは以下の通りです。
生産者は自身の温室の様子が日々気になってしょうがない。生産者にとって作物の管理に失敗すれば大惨事なので当然のことである。
(中略)
「温室内の環境が心配」でしょうがないにもかかわらず、生産者が温室内の環境を知るには、直接温室に赴いて設置した温度計や乾湿計を目視で確認するしかない。そして、植物体の状態を五感と経験に頼って良し悪しを判断するほかないのである。つまり、自分の温室の環境について、常に正確に把握している生産者は意外にも少なかったのである。温室の環境条件に品質や収量が左右される彼らには、栽培に注力するのはもちろん、環境の管理にも注意を払わなければならず、定期的な「見回り」というコストがのしかかっていた。
「このような状況を何とか改善できないか?」
「管理の負担を軽減し、もっと栽培に集中してもらえないか?」
これが、あぐりログ開発のきっかけである。(1)
開発のきっかけは、「生産者の皆様に「見回り」のコストが重くのしかかっており、それを改善したかったから」です。ただ、あぐりログをモニタリングサービスとして拡大させていく上で、コンセプトの基となる問題意識も存在しました。
前提となる問題意識・基本的な観点
・「見回り」のコストが重くのしかかっている
コストを度外視してこの問題の解決だけを目的とするのであれば、温室に複合環境制御を導入し、環境制御や制御に関わる監視を全て自動化すればよい事です。実際に日本国内でもセンシング技術・AIといったITを駆使した完全人工光型の植物工場の建設が各地で進んでおり、レタスの栽培などを行っています。
ただ実際にはこのような大規模な装置を導入できるのは、全国でもごくごく限られた施設のみです。あぐりログの開発当初は環境を計測する装置(センサ)も高価であり、多くの生産者の皆さんが導入に踏み切れないでいる状況でした。
農林水産省が公開している『園芸用施設の設置等の状況(平成28年)』(2)によると、全国のガラス室・ハウスの総面積432,204,000㎡に対して、高度環境制御装置を備えているガラス室・ハウスの総面積は10,701,000㎡であり、全体の僅か2%程です。よって、残りの98%は複合環境制御を導入していない温室ということになります。
もちろん複合環境制御を導入すれば理想的な栽培環境や理想的な品質・収穫量を得られるわけですが、殆どの施設においてそれは不可能だということです。そして実際に98%の施設が複合環境制御なしで栽培を行っているということです。大規模な環境制御装置は高価なうえに導入するとなれば入念にコストパフォーマンスを吟味しなくてはなりません。日々の作業の中で、それも単独で、そのような検討を行うのは難しい。技術を利用するための一段のステップが高すぎて、使えない状況にあったわけです。
あぐりログの提案―3つのコンセプト―
以上の問題意識を踏まえたあぐりログの提案が以下です。
①取りあえず簡単に環境のモニタリングから始めてみましょう
②手の届く範囲内で無理なく進めましょう
③単独ではなく、仲間同士情報共有して気づきを得ましょう
①取りあえず簡単に環境のモニタリングから始めてみましょう
これはいきなり大規模な環境制御から始めるのではなく、取りあえず圃場の環境を「見える化」して知ってみませんか?ということです。
弊社ではよくあぐりログの説明として、農業版の「カーナビ」という表現をしています。どのような地図なのかが分からないと、どのルートを進むのが最適なのかも分からない、という意味です。
これまで目に見えなかった二酸化炭素濃度や飽差、日射量が目に見えるようになり変化が追えるようになることで、どのように環境を制御していったら良いのかや、そもそも栽培作業の中で何に気を付けたらよいのかが分かるようになるということです。つまり、いきなり理想的な栽培環境や理想的な品質・収穫量を目指すのではなく、まずは大きな失敗をしない栽培環境を整えましょうという提案になります。
②手の届く範囲内で無理なく進めましょう
あぐりログは開発当初から「生産者の方が試してみたくなる価格」を提案しています。導入へのハードルが高すぎると、上記の農水省のデータのように導入:非導入の差が大きくなってしまいます。そこまでコストをかけなくても、ITが農業の役に立つことはできるということです。価格だけでなく、機器の設置や画面の操作なども手軽さ気軽さを重要視しています。
③単独ではなく、仲間同士情報共有して気づきを得ましょう
あぐりログには計測したデータを仲間同士で共有できるフォロー&フォロワー機能が搭載されています。これまで目に見えなかった環境値が目に見えるようになっても、データをどう活用するかの判断は単独では難しい。そこで、仲間同士データを共有できるようにすることで気づきを得ましょう、という提案です。ビッグデータやAIに頼らなくても、自分より栽培が上手な方や営農指導者の方とデータを見比べることで、精密に話し合う環境を構築し、ノウハウを得やすいようにしています。
まとめ:あぐりログのコンセプトは無理なく試してみたくなるICT農業
まとめると、あぐりログの基本的コンセプトは以下の3点です。
・いきなり頂点を目指して環境を操作するのではなく、まずは「見える化」して温室の状態を知る
・無理のない範囲で、誰でも手軽に気軽に始められる、試してみたくなる
・単独ではなく仲間同士でワイワイ活用する
あぐりログについての詳しい事項や機能については別ページに掲載しているので、是非ご覧になってみて下さいね。また、弊社では全国各地のスマート農業関連の展示会にて、定期的にブース出展、あぐりログの展示を行っております。ブースではあぐりログの実物や実際のあぐりログサービスの画面をご覧いただけます。展示会出展情報につきましては弊社ニュースレターやfacebookにて発信しておりますので、ご興味ございましたらチェックしてみて下さい。
参考文献
(1) 『スマート農業バイブル PartⅡ『データドリブン』で日本の農業を魅力あるものに』、産業開発機構株式会社 映像情報編集部、2018、14貢。
(2)『園芸用施設の設置等の状況(平成28年)』、農林水産省、http://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/haipura/setti_28.html (20181023閲覧)