日射量と日射強度とは?〜日射センサ計測値に基づく環境管理〜

 

弊社サービス「あぐりログ」では、オプションセンサを取り付けることで、「日射量」「日射強度」という指標をモニタリングすることができます。

植物の成長、作物の生産に置いて日光の光がとても重要であることは言わずもがなです。しかし、日光は人間の目で捉えることができるものの、累計でどれほどの日光が植物体に当たったか、どれぐらいの強さが植物体に当たっているかは我々には捉えることができません。

この我々には捉えきれない値-日射量と日射強度-を「見える化」し、それに基づいて環境管理を実施することで、栽培に置いて様々なメリットを得ることができます。この記事では、「最近農業に関わるようになった」「最近になって興味を持つようになった」方へ向けて、指標の意味から日射量・日射強度に基づく環境管理の実例までを説明していきます。

 

日射量とは?

まず「日射量」の言葉の意味から。

読んで字の如く、「日の射す量」なので漢字からある程度想像がつきますが、日射量とは「地表の一点に到達した太陽の放射エネルギー」のことです。日射量には直達日射量と散乱日射量がありますが、一般的に言われる「日射量」この2つの和であり、全天日射量と呼ばれます(直達日射量と散乱日射量の説明は割愛します)。

全天日射量は、地上に置かれた水平面に入射する太陽の放射エネルギーと空から到達する散乱光のエネルギーを合計したものです。簡単に言うと、地上の一点の水平面が受ける「ひざし」の総量ですね。

あぐりログでは日射量を MJ/㎡ で表示しており、単位面積当たりに入射する太陽光のエネルギーをモニタリングしています。つまり日射量を測定するには、この「太陽光のエネルギーの大きさ」を知れば良いということになります。

 

あぐりログ 日射量のグラフ例

 

日射強度とは?

「日射強度」の方ですが、先述の日射量を測定するために必要な「太陽エネルギーの大きさ」が日射強度となります。言ってしまえば「日射量」も「太陽エネルギーの大きさ」ではあるのですが、日射量は一定時間に到達する太陽光のエネルギーの総量であるのに対して、日射強度は「ある一瞬の太陽光の強さ」を示したものになります。

あぐりログでは日射量を W/㎡ で表示しており、単位面積当たりに入射する太陽光の強さをモニタリングしています。

 

あぐりログ 日射強度のグラフ例

 

因みに、光はワット・ジュールで評価することが多いですが、これらの違いが分かりますでしょうか?以下の文章がワットとジュールの違いを理解するのに良かったので紹介します。

ワットとジュールの違いは、車に置き換えて考えるといいでしょう。時速60kmで1日運転し、家に帰ったら走行距離が210kmでした。光の場合は、時速がワットで、1日の走行距離がジュールです。(1)

 

日射に合わせた環境管理

さて日射に関する指標の意味が分かったところで、それらのデータをどのように活用すれば良いのでしょうか?1つの実例を紹介してみたいと思います。

「ミニトマト20tどりの親方」こと静岡県伊豆の国市の鈴木幸雄さんのハウス(ミニトマトを栽培)では、日射量に合わせた潅水・肥料管理を行っており、作物の生長をコントロールしています。特に、日射量の増える3-4月以降は水をどんどんと与えるといいます。

「必要なのは、水と肥料です。まず、日射量が増える分、それに比例して水もじゃんじゃん増やす」(2)

鈴木さんのハウスが位置する静岡県では、3月の最大日射量が1537J/㎠(三島市)であり、12月の1022J/㎠(三島市)に比べ約1.5倍となります。よって潅水量も1.5倍とし、肥料もどんどんと与えることが必要ということです。

 

日射量と日射強度に基づく環境管理のまとめ

日射量と日射強度についてのまとめです。

・日射量とは、地上の一点の水平面が受ける「ひざし」の総量

・日射強度はある一瞬の「太陽光の強さ」

・日射量を計測することで、より正確な潅水・肥料管理が可能になり、栽培の効率化と収量の向上に繋がる

今回は日射量と日射強度という指標について掘り下げて書いてみました。日の光は目に見えますが、ぼーっと眺めていてもどれぐらいの強さでどれぐらいのエネルギー量なのかは目で分かりません。センサで計測、グラフで見える化することで客観的なデータとなり、活用できるものと考えます。

記事中の情報はできるだけ参考文献や参考サイトに準拠していますが、もし間違い等あればあぐりログユーザーフォーラム等にてご指摘頂ければと思います。その他、あぐりログについての詳しい事項や機能については別ページに掲載しているので、是非ご覧になってみて下さい。

 

参考文献

(1) 『現代農業』農山漁村文化協会 p.173,2014-4

(2) 『現代農業』農山漁村文化協会 p.192,2017-5